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2023年7月19日 (水)

西洋古典研究会第83回研究発表会のご案内

西洋古典研究会第83回研究発表会
日 時:2023年8月5日(土)研究発表  14時00分より
                
場 所:法政大学市ヶ谷キャンパス 大内山校舎 Y804 教室
     なお、今大会はズーム会議による同時中継を行います。
     アドレスは8月1日頃に事務局よりメールにて御連絡致します。
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                         プ ロ グ ラ ム
研究発表(発表30分 質疑25分)         14:00 より
  1.プラトン『ポリテイア』と「いかに語るべきか」という問題
                       平石 千智(学習院大学)
  2.ギリシア思想史上におけるμῆτις(狡知・策略)の役割
    ――プラトン『饗宴』におけるエロース誕生神話を手掛かりに――
                       梶村 哲矢(名古屋大学)
             休   憩
総 会                       16:15頃 より
*今回は、研究発表会の終了後、来場の方々との懇親の場を設ける予定です。
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□会場のご案内:
交通
飯田橋駅 JR総武線、東京メトロ有楽町線・東西線・南北線・都営大江戸線 
市ヶ谷駅 JR総武線、東京メトロ有楽町線・南北線・都営新宿線
 各駅下車後、JR線線路に沿って徒歩約10分。
 市ヶ谷キャンパス 交通アクセス :: 法政大学 市ケ谷キャンパス
 キャンパスマップ キャンパスマップ : 法政大学 市ケ谷キャンパス
 施設案内(会場Y804教室)大内山校舎|市ヶ谷キャンパス|法政大学 教室設備ガイド
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        発 表 要 旨
プラトン『ポリテイア』と「いかに語るべきか」という問題
   平石 千智(学習院大学)
                   
 『ポリテイア』第3巻では、理想国の中で存在が許される創作物を検討する際に、「①全体が真似で語られているもの②作者による報告のもの③その両方があるもの」の3つに分ける。そして、理想国では③の語り方をする創作物だけが認められると主張される。すなわち、なるべく作者による報告(叙述)の部分を多くしつつ、優れた人の真似は作中に取り入れるといった形式の創作物のみが理想国では認められるのである。創作物に優れた人の真似を取り入れることが許されるのは、優れた人の真似をすることが善いことだからである。すなわち、劣った人を真似の仕方で語る創作物は、それを受容する人々にとっては、それを真似したくなってしまう点で悪いものであるし、それを創作する作者にとっても、創作の際に真似を行わざるを得ないので悪いものなのである。実際、正しい人はすべてを真似る仕方で物語を語ることはなく、優れた人の行為に関してのみ真似しようとするだろうということが396D-Eにおいて述べられている。 
 では、『ポリテイア』そのものはどうだろうか。先の3つの創作物の区別を対話編『ポリテイア』自体に当てはめるのであれば、全体がソクラテスと他の登場人物たちの語りを真似する①の形で語られているものだと考えられる。すなわち『ポリテイア』は、優れた人は全てを真似る仕方で物語を語らないという旨を、全てを物語る仕方で物語るという構造になっているのである。なぜプラトンは、創作物の真似に関する主張を、真似という仕方で語ったのだろうか。本発表ではこの問題について、理想国で用いられる(認められる)大地生まれの神話と金属の神話という物語、いわゆる高貴な嘘の解釈を通して、『ポリテイア』という作品自体が、正義の探求の途上で乗り越えられるべき創作物として書かれていた可能性を示したい。
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ギリシア思想史上におけるμῆτις(狡知・策略)の役割
 ――プラトン『饗宴』におけるエロース誕生神話を手掛かりに――
   梶村 哲矢(名古屋大学)
                       
 本発表では、ギリシア思想史、特にプラトン哲学におけるμῆτις(狡知・策略)の役割を考察する。μῆτιςの発現による「知」は、ホメロスにおいてはオデュッセウスに代表される英雄の資質の一つとして扱われており、μῆτιςは重要な意味を持つ概念であったはずであるが、前6世紀以降肯定的に評価されることが少なくなっていった。M. DetienneとJ. -P. VernantによるLes Ruses de l’Intelligence: La mètis des Grecs (1974)では、μῆτιςが肯定的に評価されなくなった原因として、プラトンによる観想的な「知」の重視がその後の西洋思想において支配的になった点を挙げおり、プラトンによるμῆτιςの排除を批判している。確かに、μῆτιςは「柔軟さ」を特徴とし、不変の性質を持たない点がその特徴であるため、「知」における純粋性を重視するプラトン哲学では評価される余地は無いと言いうる。また、μῆτιςはその力の発現において「策略」や「騙し」といった、道徳上問題とされうる形を取ることもその特徴であるため、倫理性の観点からもプラトン哲学とは相容れないと言いうるであろう。
 しかし、実際はDetienneとVernantが批判的に検討しているそのプラトン哲学において、μῆτιςは重要な役割を果たしているのである。『饗宴』(203B-E)において、ダイモーンであり「愛知者」としてのエロースの誕生神話が語られているが、そこでエロースの祖先がμῆτιςを神格化したμῆτις女神であるとされているのである。本発表では、この神話に着目し、プラトンがμῆτιςを真正の「知」から排除したのではなく、むしろ知恵を愛し求める哲学の営みの中に取り込んでいる点を指摘したい。『饗宴』でのエロースは、その父ポロスからσοφία(知恵)を受け継ぎ、そして母ペニアからἀπορία(困窮・行き詰まり)を受け継いでおり、両親の性質が一体となって「知者」と「無知者」との中間的存在である「愛知者エロース」が誕生したと『饗宴』では説明されている。そして、ここには父方の祖母にあたるμῆτις女神より受け継いだμῆτιςも重要な役割を果たしているのである。
 発表者は、プラトン哲学においてμῆτιςの「知」はσοφίαを追い求めることをやめない「知的原動力」として作用していると想定している。それは、ホメロス以来μῆτιςの本質として、目的を達成するための「粘り強さ」という面を指摘できるからである。プラトン哲学ではμῆτιςは表面上現れないものの、プラトンによって哲学の営みの中に確かに取り込まれている点を考察してみたい。

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