西洋古典研究会第85回研究発表会のご案内
西洋古典研究会第85回研究発表会
日 時:2023年8月3日(土)研究発表 14時00分より
場 所:法政大学市ヶ谷キャンパス 大内山校舎 Y804 教室
ズーム会議による同時中継を行います。*ズームのご案内はこのブログで8月1日の予定
プ ロ グ ラ ム
研究発表(発表30分 質疑25分) 14:00 より
1.プラトン『クラテュロス』における名前の定義の再解釈
片山 寛子(学習院大学)
2.後期メガラ派の哲学と「拡散した」キュニシズム
――メガラのスティルポンの事例に即して――
長尾 柾輝(東京大学)
休 憩
総 会 16:15頃 より
*研究発表会の終了後、来場の方々との懇親の場を設ける予定です。
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□会場のご案内:
交通 飯田橋駅 JR総武線、東京メトロ有楽町線・東西線・南北線・都営大江戸線
市ヶ谷駅 JR総武線、東京メトロ有楽町線・南北線・都営新宿線
各駅下車後、JR線線路に沿って徒歩約10分。
市ヶ谷キャンパス 交通アクセス :: 法政大学 市ケ谷キャンパス
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施設案内(会場Y804教室)大内山校舎|市ヶ谷キャンパス|法政大学 教室設備ガイド
発 表 要 旨
プラトン『クラテュロス』における名前の定義の再解釈
片山 寛子(学習院大学)
本発表においては、プラトンの対話篇『クラテュロス』の388b10-c1の検討を行う。
『クラテュロス』は名前の正しさを主題とした対話篇である。ソクラテスは対話相手であるヘルモゲネスとクラテュロスの自説を順番に検討する過程で、ヘルモゲネスに対して名前の機能を自ら定義してみせる(388b10-c1)。ソクラテスによると、名前によって使用者は「お互いに何かを教え合っているのであり、またもろもろの事物をそのあり方に従って区分して」おり、名前は「何らか教えるための道具であり、そしてあり方を区分するための道具」であるという。この文においては「教え合う」「区分する」という機能を説明する二つの語が接続詞καίによって結ばれているのだが、まさにこの点に解釈上の問題があると発表者は考える。というのも、この接続詞καίの解釈次第で、名前には二つの異なる機能が備わっているとも、これらの二つの機能は単一の機能の言い換えであるとも解釈することが可能だからである。しかしながら、前者の解釈を支持するのはKretzmannのみであり、Barney、Sedley、Ademolloら他の多くの研究者はこの定義が単一の機能を表していると解釈してきた。ただし彼らが当該箇所について言及する場合、機能が単一か複数かという点は問題視されず、半ば慣習的に単一の機能の説明だと前提されているように思われる。そこで本発表においては、改めてこの問題を取り扱い、それぞれの立場に従って当該箇所を再解釈したうえで比較する。そのうえで、異なる二つの機能だと解釈した場合の方が、『クラテュロス』全体に対する解釈の幅が広がると論じる。
後期メガラ派の哲学と「拡散した」キュニシズム
――メガラのスティルポンの事例に即して――
長尾 柾輝(東京大学)
ソクラテスの死後、彼の弟子筋からは多くの「学派」が派生した。それらのうち以下の五派については、現存資料を通じてある程度の概要が知られる。
1.アテナイのアンティステネスに由来するキュニコス派。
2.キュレネのアリスティッポスに由来するキュレネ派。
3.メガラのエウクレイデスに由来するメガラ派。
4.エリスのファイドンに由来し、エレトリアのメネデモスが刷新したエリス゠エレトリア派。
5.アテナイのプラトンに由来するアカデメイア派。
一般にわれわれは、西洋哲学史上きわだって重要な位置を占めるプラトンの学統から自余の諸系統を区別し、後者を特に「小ソクラテス派(Minor Socratics = MS)」と総称するならわしである。
さて、紀元前4世紀末から同3世紀はじめにかけての後期MS思潮は、「拡散した(diffused)」キュニシズムの影響によって特徴づけられる。本発表では時間の都合上、とりわけ後期メガラ派のスティルポンに見出される「キュニコス的」な要素を集中的に分析することで、後期MSがそもそも/いかにしてキュニコス化したのかという問いの一面にアプローチしたい。先行研究は多くの場合、「キュニコス的」という評価をなかば自明のものとして反復してきたが、その妥当性にはいくつかの疑問符がつく。
議論の構成は以下のとおりである。まず第一節で、スティルポンの思想・逸話・伝記における「キュニコス的」な要素を整理する。次に第二節で、そもそも「キュニコス的である」とはいかなることかを一般的・概観的な仕方で簡単に論じる。そして第三節で、かかる検討内容を具体的な事例へと適用し、第一節に見た諸要素は実際には彼の「キュニコス性」を示すものでは「ない」という結論を導く。そのうえで最後に、こうした否定的結論にともなういくつかの積極的な含意を確認する。
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